プラスチックの生分解

プラスチックってなに?

プラスチックとは石油から作られた合成有機ポリマーで、現在の私たちの生活に欠かせないものになっています。どこをみてもプラスチックがありますよね。現在の生活ではプラスチックを見ない日などないでしょう。[1]

このプラスチックが多用されている理由はとても単純です。それは用途が広く、耐性も高い材料だからです。しかしこのプラスチックにはとても大きな欠点もあります。それはとても劣化しにくく、環境に蓄積する可能性が高いこと、そして現在それが実際に起こっているということです。

プラスチックを分解するのには何世紀もかかるため、これまでに製造された全てのリサイクルまたは燃焼されていないプラスチックは、いまだにこの地球上に残っています。[2] そのため、このプラスチックの問題は環境保護の観点からもとても大きな問題の1つとなっています。

では具体的にどのくらいのプラスチックが排出されているのでしょうか?
海へのプラスチックの排出は、年間少なくとも800万トンもあることが現在わかっています。これらのプラスチックの排出から出てくる、浮遊プラスチックの破片は海洋ゴミの中でも最も多く、廃プラスチック自体も地表水から海堆積物までの全ての海洋ゴミの80%も占めています。プラスチックは全ての大陸の海岸線で検出されていますが、特に人気のある観光地や人口密集地域の近くで多く、これが地域社会に病気を引き起こす可能性もあることが知られています。[3]

国連(UN)は2030年末までに達成すべき17の持続可能な開発目標を想定しました。そのなかには、責任ある消費と生産を認識し、気候変動を食い止める行動と貧困ライン以下の生活をなくすというものがあります。[4]

これらのことプラスチックの汚染は密接に関係しているので、これらを達成するためにはプラスチック汚染の問題をどうにかしなければなりません。つまり、この問題はとても重要であり、解決策を早急に見つけることが必要であると考えられています。そこで今回は微生物がプラスチックを分解する方法について説明したいと思います。

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プラスチックによる汚染

微生物ってプラスチックを食べられるの?

プラスチックで汚染された環境で様々な土壌細菌や真菌、放射菌などの菌が存在していることが報告されています。これらの生物は極端な条件に適応し、これらの廃棄物を炭素源や窒素源として利用していることが発見されました。

2016年に日本の科学者がペットボトルリサイクル工場にいる様々な細菌をテストしたことで、Ideonella sakaiensis 201-F6がペットボトルの製造に使用されているプラスチックの1つである、ポリエチレンテレフタレート(PET)を消化できることを発見しました。

このプラスチックの消化は、細菌が持っているPETaseと呼ばれる酵素(化学反応を加速できるタンパク質の一種です。)の分泌によって行われます。これによってPETの特定の化学結合(エステル)が分割されて、細菌が吸収できる小さな分子が残ります。これによってその中の炭素を食物源として使用しています。[4]

他の細菌の酵素もPETをゆっくりと消化できることがすでに知られています。しかし先ほど出てきたPETaseは明らかに、PETを消化するために特別に進化したようだと見られています。これはその反応の速度が速いこと、そして効率的であることからそう考えられていて、これがPETの消化をバイオサイクルで使用することが可能であると示唆していると言えます。

またこれよりも前、2012年にYale Universityの学生がプラスチックを食べる珍しいキノコを発見しています。このキノコはPestalotiopsis microporaと呼ばれていて、アマゾンの熱帯雨林で見つかりました。この発見から菌類はポリウレタン(プラスチック製品の主成分です)を消費し、有機物に変換することで、プラスチックだけで生きられるということがわかりました![5]

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微生物はプラスチックを分解できます

微生物はプラスチックによる汚染を解決できる?

現段階でこの質問に対して明確に答えることはできませんが、プラスチックを分解できる微生物についてさらに調査する必要があると考えられています。合成生物学とゲノム編集の発展によって、将来的にはプラスチックの汚染を制御できるツールになるのではないかと期待されています。[6]

先ほども述べたように、将来的には解決へと繋がるかもしれませんが、現段階ではまだまだその道のりは長いと言えるでしょう。また、私たちの生活もプラスチックに溢れ、このままではいくら微生物がプラスチックを分解しても追いつかないかもしれません。だからこのプラスチックの汚染問題を解決するためには、私たち自身も環境にやさしい製品を選び、リサイクルできるものはリサイクルすることで廃棄物の汚染を減らし、環境保全に尽力することが何より大切です。

参考文献:

  1. https://www.plasticseurope.org/en/about-plastics/what-are-plastics
  2. https://www.greenpeace.org/international/story/7281/every-single-piece-of-plastic-ever-made-still-exists-heres-the-story/
  3. https://www.iucn.org/resources/issues-briefs/marine-plastics#:~:text=At%20least%208%20million%20tons,causes%20severe%20injuries%20and%20deaths.
  4. https://theconversation.com/how-plastic-eating-bacteria-actually-work-a-chemist-explains-95233
  5. https://www.intelligentliving.co/edible-mushroom-eating-plastic/
  6. https://2019.igem.org/Team:TU_Kaiserslautern
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